広島県東部、備後地区。海辺からローカル線で1時間ほど揺られたところに、上下町という白壁の美しい町がある。その白壁の街から車で5分ほど外れた矢野温泉の近くで、日本最古のホステルのひとつである「自然の森M.G.ユースホステル」を営むのが施主の和知啓子さんだ。 上下町は石見銀山から瀬戸内海の港までを繫ぐ銀の集積中継地であり、その重要性から幕府直轄の天領として栄えていた街だった。そんな繁栄の面影を残す美しい白壁の街並みには、今となっては年に一度のひなまつりの時期を除いては少し人影が寂しい。
そんな上下に少しでも賑わいをということで、和知さんはJR上下駅の待合室を自ら借りて、お土産やお菓子などの小さな商店を始めることを考えた。 1時間に1本ほどの電車を待つ間、温かいお茶やお菓子を楽しみながら寛げる空間を作るべく、畳敷きの小上がりを作った。物販コーナーは、時期や季節で変わるだろう物量や物の大きさに合わせて可変性の高いボックスを作って積み上げる仕上げにした。格好つけるのではなく、暖かい地元の雰囲気を出せる空間にしようと考えた。
和知さんの人柄に惹かれて全国から集まった10人以上の有志と地元の方々で、わいわいとボックスを作り、物販コーナーが出来上がっていく。
普段は2、3人しかいない待合室であったのが、賑わって明るくなった。その景色を、物珍しそうに電車の運転手が通り過ぎていくのが印象的だった。
date | 2018.2 |
client | 自然の森M.G.ユースホステル 株式会社リディラバ Shizen no mori M.G Youth Hostel Ridilover, inc. |
location | 広島県府中市 Fuchu, Hiroshima |